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【書評】聖の青春/命を懸けて将棋を指し、死んだ男

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こんど映画になるそうで

おそらく読むと涙を流し、自分も一所懸命何かをやろうという気になります。

この松山ケンイチさん演じる村山聖はご本人の持つ勝負への執念が潜んでいる感じが良く似ていると思います。

f:id:musicismath:20160912233357p:plainご本人です

 

ある有名な名人で日本将棋連盟の会長でもあった方の言葉で、「自分には兄二人がいて、上の二人は頭が悪いから東大へ行き、自分は頭が良かったのでプロ棋士になった」というぐらい将棋は頭脳の格闘技と呼ばれるぐらい頭を使うそうです。

対局によっては体重が2キロも減り、心身にとても負荷がかかるほど将棋においては負けず嫌い同士の対戦となります。

 

村山聖は5歳のときにネフローゼという腎臓の病気にかかり、ほとんど病院のベッドの上で過ごします。きまぐれに聖の父が将棋盤を持ってくるとこれにのめり込み、母に将棋の本を毎週持ってきてもらい、ベッド上で本を読み駒を並べてメキメキ棋力をあげます。子供一人でです。

 

中学1年生の時当時のスター「谷川浩司」に憧れ、「谷川を倒すには今しかないんじゃ!」と胆力のこもった迫力で、両親や親戚一同を黙らせ、プロ棋士を目指すこととなる。この病院学級の歳の近い子が明日にはなくなる環境で聖の死生観は子供ながらに持っていたのだ。自分もそう長生きできるかわからない。

 

プロを目指すなら師匠を探し、奨励会というプロ養成機関に入学テストを受けます。試験の方は問題なく合格の成績だったそうだ。だが師匠候補が複数存在し、いろいろな行き違いある高名な重鎮のメンツをつぶすだのなんなの村山本人には関係の無いところで合否は判定され、なんと不合格にされるんです。29歳という短さにおいての1年は大きい。村山は泣き叫び暴れ、腎臓の病気が悪化し、健康を傷つけるという最悪の結果となってしまった。

 

だがこの聖の災難に、師匠・森信雄は村山への教育を愛以上の情熱を注ぐことを誓います。

これが体調不良が常の村山のために師匠たるものがパンツを買って行ったり、風呂嫌いの村山をなんとか風呂に入らせたり、おっさんなのに少女マンガを買いに行かされたりと、稀に見る弟子孝行をするという名物師弟となりました。

 

将棋もメキメキ段位を挙げていくんですが、相手も猛者揃いの為、対局の後にぶっ倒れて病院へ運ばれることも珍しくありませんでした。ある時は病院から対局へ向かいまた病院へ運ばれるという、ネフローゼの悪化はなかなか好転せず、体調万全の対局などほぼなかったのではないか。本当に命を削って名人への道を目指しています。

 

将棋の話以外にも、羽生さんを行き着けの定食屋さんにデートを誘うかのようなドキドキのエピソードや、棋士仲間との深酒や麻雀など、みんながやるような普通の青春にも憧れが強く、きっと体には障るんでしょうけど、生の有難さを感謝しつつ今を楽しもうとする姿もあります。

 

29歳で命を脅かすガンが膀胱に出来てしまった。これは切除しないと死ぬ。しかし切除すると彼が将棋と同じぐらい切望する普通の家庭・自分の子供を持てなくなる。

ここまで何と並べても将棋を選んできた村山が始めて、手を止め長考するのです。

 

 

森師匠とのエピソードや抜群の終盤力であっというまに駆け抜ける奨励会、村山が匂わす生命についての独特の感性など、村山という人間の魅力が詰まった一冊です。

読めばきっと心の一冊になると思います。