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無人島に持っていく一つ

雑記

無人島に持っていくならば、何を持っていこう。なんでも手元にあるに越したことはない。

しかし田舎で生活するなら絶対に必要なもの、それはお金だ。

 

俺は10年東京で生活をした後に田舎に戻った。そしてしばらくして思った。

田舎暮らしほどお金が必要であり、そしてそれは得がたいのだ。元来「お金が全て!」という拝金主義者ではないのだが、一頃はそれに近いことを思うこともしばしばだ。

むしろこれまでが牧歌的で楽観的過ぎたのだ、おぼこい世間知らずだったのだろう。

 

 

俺はこれまで自分で財産を築いたこともない、一貫して負け組みの部類だが、都会にいてもあまりそれが気にならなかった。

それは都会の方が単純に賃金が高いということもある。

マクドナルドのアルバイトでも200円くらいここと東京じゃ違う。

 

正社員はもちろん、非正規の派遣でも1500円くらいの案件がゴロゴロしている東京では月収にすると10万強は優に差がつく。

土地の値段は圧倒的に東京の方が高いので、家賃や駐車場代は田舎に軍配が上がるが、それ以外のモノは東京のほうが安い。

 

田舎は物価が安いという風潮は最近余り聞かなくなった。バブルの頃はそうだったのかもしれないが、消耗品などの値段は田舎のほうが高かった。デフレの波が地方まで届いてしまいここ数年で画一化された結果となった。

 

 

 

俺が東京のカルチャーショックを肌で感じたのは恥ずかしい話だが、牛丼の値段だった。当時地元には吉野家はしかなく、吉野家は特盛り600円ぐらいだったか。

先に上京した友人宅に居候していた頃、彼が松屋で持ち帰りを買ってきてくれた。

値段を聞いて驚いた。「280円!?そんな安い飯屋があるの?」当時は東京でもすき家も店舗数は少なかった。育ち盛りは満腹こそ至高の未開人的味覚だったため、腹が減れば松屋で500円しないセットものを頼んだものだ。

 

話が逸れてしまったが、都会は給与もそこそこでモノも安く、交通も安い。我が田舎のJRの初乗りは170円くらいだ。さらにそこからタクシーのメーター並にガンガンズンズングイグイ上昇する。しかも一時間あたりの本数は平均2本ちょっとだろう。

時は金なりと言うが、ここでは簡単に30分1時間という大雑把さで、時間を失う。

これでも一応県庁所在地なのだが。

 

交通の大動脈がこの細さである。しかも都会のようにウェブ状に発達していず、ひたすら南から北へと進む猪突猛進型の路線だ。徒歩20分くらいのざっくりとした最寄り駅しかない。

 

そこで初めて車を切望するようになる。車さえあればその問題は解決する。30分1時間待ちという負債を半分以下に減らしてくれる、ある種の錬金術だ。それを他人にも施してあげれば喜ばれる。便利な人はモテる。

しかし買えない!維持費もない!地元に住み続けた人間はきちんと認識していたことを、20代をまるっと電車がすぐ来て当たり前の環境で過ごしたせいか、そういう田舎で生き抜く野生の嗅覚みたいなものが退化していた。車が無いと行動も限定的になる。徐々に世界が狭まる。ここでは自家用車を持つことこそが成人の証なのだ。

 

俺は自転車しか乗れない。高校の頃と同じだ。

先日も思いつきの遠出をしてしまったため、帰りに大雨に見舞われ、ズボンの太ももの裏の部分まで濡れるという記録的な水害にあった。

自転車を漕ぐ姿勢でズボンの太ももの裏まで濡れるのは尋常ではない。そこは最後の砦・聖域であり、通常侵されるはずもない。だがそこに水分が到達する頃はもう全身濡れて無いところなどないのだ。ハンドタオルでは手に負えないバスタオル級のズブ濡れが確定している。

 

 

その日、もも裏が濡れて始めて2時間の間、尿意を何度も催した。だがこんなビショビショ状態を受け入れてくれる場所は家か病院かぐらいだ。コンビニだってよう入れません。俺は病人ではないから家に帰るしかなかった。

 

果たしてこの尿意を我慢する必要はあるのか。もはや状況はプールでおしっこをするのに近い。排水溝に流れる分、それほど害はない。誰に対して果たすべき義理なのだ?公衆道徳か?きちんとした大人だからか?トイレの自立が人間の自立という言葉にか?長湯でしわしわになったような指を見ながら俺は自問自答を繰り返し、ペダルを漕いだ。そして家に着きトイレに駆け込んだ。

 

歓喜の咆哮ならぬ歓喜の放尿であった。俺は自然の猛威に負けた、圧倒的大敗だった。だが大事なものは守った。雨の浸水していない心の奥にそれは守られたはずだった。

 

 

しかし湯船に浸りながら意識が正常になると、「30代でチャリでビショ濡れってきっついなー

やっぱ車がないといかんなぁ」「金がないと惨めだなあ

などと己が招いた境遇の筋違いの恨み節を変わらず吐き続けるのであった。

よくわからん文書になってしまったけどとりあえず寝ます。